尻尾のない日記

イヌグラファーの日常

運河沿いの思い出 / 小さな巻尾の犬

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ずいぶん昔、旅行で訪れたバンコクである人に出会った。バンコクに住んで働いていたことがあるという彼は、タイのおもしろい話をたくさんしてくれた。安宿で知り合った私をふらりと町歩きに誘って、プラトゥナームまで行くと運河ボートに乗りラムカムヘンまで行った。ザ・モールの脇の通路を歩いて通りに出る途中、太った男の子に「 กี่โมงนะครับ (何時ですか?)」と聞かれて、黙って腕を差し出し男の子に時計を見せた私を「すごい、タイ語わかるんじゃん」と褒めてくれた。私はそのフレーズをたまたま本で見て知っていただけだったけれど、うれしい気持ちになった。大きな通りに出ると少し歩いてすぐにまた運河のあるほうへ曲がり、橋を越えて運河を渡った。渡った先の左手にはいわゆるスラムが広がっていて、彼は私を連れてそこへ入った。そこは運河沿いの集落で、危なかったり怖かったりはしなかった。ただ、どこからが他人の家の中なのかよくわからず、私は終始びくびくしながら彼のあとをついて歩いた。水上の集落にはにわとりが歩いていたり、上半身裸のおじいさんがくつろいでいたりもした。そうして運河沿いへ出ると、反対側にさっきの船着場が見えた。小さな渡し船に乗って向かいの岸へ着くと、また運河ボートに乗って都心へ戻った。17年ぶりに降り立ち眺めた思い出深い景色は、スラムなどどこにもなく、あのときとはずいぶん違っていた。

 

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ここで何か食べてから帰ろうかと入った屋台のたくさん出ている路地に、小さな巻尾の犬がいた。東南アジアではあまり巻尾の犬は見ない。つみれ団子をあげようと呼んだら来たけれど、あげても食べなかった。

 

2016年12月5日(月)