尻尾のない日記

イヌグラファーの日常

ある猫の死 / 夜のヘーン

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道路の反対側に猫がいた。薄暗くてよく見えなかったけれど、猫はその猫の体と同じぐらいの大きさの何かにすがるようにしていた。食堂の前だったので大きな川魚の焼いたのでももらったのかなと思ったけれど、それにしては少し大きい。そう思って見ていたらその何かがびくん!と跳ねるように動いた。そしてまた動かなくなった。もしかして…と思い、道路を渡って近くに行くと、さっきの猫とはべつに血を流した猫が横たわっていた。猫の目は飛び出していて、まわりには血しぶきが飛んでいた。交通事故だろう。もう一匹の猫は少し離れたテーブルの下に行きそこでこちらをじっと見ている。横たわっている猫の体がまた跳ねた。まだ生きている。しかし私はこの猫を子猫が屋根から落ちてきたときのように急いで病院へ連れて行こうとは思わなかった。そういうことは少しも思わなかった。猫には首輪が付いていた。食堂の人に合図をして来てもらうとやはり食堂でかわいがっていた猫だという。食堂の人は猫の名前を何度も呼んだ。それから病院へ連れて行ったら間に合うだろうかとそんなことは少しも思っていないような口調で言った。猫はもう一度大きく体を痙攣させた。それが最期だった。私は食堂の人が猫の亡骸をどうにかするまでそこにいた。しゃがんで中身の抜けたばかりのまだ温度の残る体に手をのせて話しかけた。食堂の人が戻ってきて私を不思議そうに見て、猫の亡骸をゴミでも放り込むようにダンボール箱に入れて持っていった。

 

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ずいぶん遅くなってしまった。夜、ヘーンはひとりで誰もいないバイクタクシー乗り場にいた。私を見ると尻尾を思い切り横に振って元気よく頭から懐に突っ込んできた。しばらく遊んで帰ろうとすると、ヘーンはずいぶん向こうのほうまで一緒についてきてくれた。ありがとう、車に気を付けてちゃんと帰るんだよ。

 

2017年1月12日(木)